委員長挨拶
一般社団法人日本総合健診医学会(以下、日本総合健診医学会)と公益社団法人日本人間ドック学会(以下、日本人間ドック学会)は、2012年(平成24年)
から、合同で人間ドック健診専門医制度を設けています。この制度の目的は、受診者の健康寿命を延伸するために、質の高い人間ドック健診を行うことができる「人間ドック健診専門医」を育成することにあります。このために、日本総合健診医学会と日本人間ドック学会の両学会合同の人間ドック健診専門医制度委員会では、人間ドック健診専門医に関する理念・基本方針、施行規則・施行細則、専門医研修カリキュラム、更新単位の設定等を定めています。
人間ドック健診専門医を取得後、所定の条件により人間ドック健診指導医となります。人間ドック健診指導医が常勤で勤務し、所定の条件に合致した医療機関が人間ドック健診研修施設となります。人間ドック健診専門医の受験資格を得るためには、この研修施設に勤務し研修を受けることが必要です。
現在、本委員会では日本の各都道府県に全体で約500の研修施設を設けることを目指しております。このようにして育成された人間ドック健診専門医が、人間ドック受診者に対して、確実に、疾病予防、重症化予防、健康増進、並びに早期の治療介入を図ることとなります。
今後も、人間ドック健診専門医制度のさらなる改善に関するご意見、ご協力を賜りたくよろしくお願い申し上げます。
人間ドック健診専門医制度委員会
委員長
人間ドック健診専門医の理念
人間ドック健診専門医は健診受診者に対して温厚な態度で、相手の話を聞く姿勢で余裕をもって接しなければならない。また同時に高い倫理観をもち、人の痛みを理解し、受診者の将来の健康に重大な責任を担っていることを自覚しなければならない。
そのためには心身ともに自ずから健康であろうと心がけ、よき生活習慣を実践してゆかなければならない。
更に専門医の社会的責任として国民的な健康啓発も求められている。健診では疾病の早期発見はもとより、生活習慣病予防の重要性を念頭に置かなければならない。健康と思っている受診者を対象としていることから予防医学に対する知識も十分持っていることが重要である。
健診で得られる限られたデータを基に判断を下さなければならないので、常に医学の進歩、変化に柔軟に対応するために、医療全般にわたり平均以上の知識が要求され、新しい知識の取得も重要なポイントとなる。
また、健診結果の判定にあたっては数値でのみで判断せず、個人の背景、年齢、性、日常の活動量などを十分加味して、個人の基準値を基に判断するきめ細かい健診が実践できる能力を持たなければならない。
・医療面接に基づいた生活習慣の問題点を指摘できる。
・医療面接、身体診察、検査所見に基づき、健康評価ができる。
・健康評価の結果から、必要な再検査、精密検査の指示をし、その後の健康計画を立案できる。
・再検査、精密検査の結果を受診者に説明し、事後指導ができる。
・健康評価の結果から、専門医に紹介すべき病態、疾患が判断できる。
・各学会のガイドラインに基づいた標準的なマネジメントができる。
・健康啓発を介して、社会(国民)への予防医学活動をすることにより、健康増進ができる。
・健診施設の質の向上について、中心的な役割を果たすことができる。