一般目標:General Instructional Objective(GIO)
わが国独自の健康診断システム、人間ドック健診の目的である、二次予防としてのがんをはじめとする生活習慣病の早期発見・早期治療、一次予防としての生活習慣病の罹病率・死亡率の減少、さらにゼロ次予防としての健康増進を達成すべく、人間ドック健診受診者の健康を担う医師としての役割を果たすことができることを目標とする。この目標を達成するためには、人間ドック健診研修施設での研修により、人間ドック健診専門医認定試験に合格するのみならず、subspecialty としての豊富な経験をすることにより、他領域の専門医との連携を含め常に受診者に対して的確な、かつ最善の判断のできる人間ドック健診専門医となることを目指す。研修到達目標は、日本総合健診医学会および日本人間ドック・予防医療学会の専門医制度委員会が作成した専門医研修カリキュラムに準じたものである。
行動目標:Structural Behavior Objectives(SBOs)
研修到達目標を知識、経験目標、必須経験目標の3大項目に分け、更に研修上の重要度、到達目標をカリキュラムとして示した。
1.医療面接:医療面接により、人間ドック健診受診者の臨床背景を把握すると共に、生活習慣の問題点を指摘し、その改善指導をすることができる。さらに、この医療面接をゼロ次予防の資料として活用できる。
2.身体診察:人間ドック健診での必要な身体診察法が実施でき、また、その記録が正しくSOAP に準じてできる。また、その結果について受診者に正しく説明できる。
3.検査:人間ドック健診における臨床検査について、検体検査、生理学的検査、画像検査、病理学的検査について、実際に経験することにより検査チームとの連携ができる。なお、臨床検査の経験に際しては、指導医のもとに検査のベネフィットとリスクを理解し、受診者に伝えることができる。さらに、人間ドック健診の基本検査項目以外の検査についは、受診者の同意をとることができる。
4.医療面接、身体診察、検査所見に基づいた健康評価ができ、その結果について受診者に正しく説明できる。
5.健康評価の結果から、必要な再検査、精密検査の指示をし、その後の健診計画を受診者と共に立案できる。
6.再検査、精密検査の結果を受診者に説明し、事後指導ができる。
7.診断の結果から、専門医に紹介すべき病態・疾患が判断できる。
8.各学会のガイドラインに基づいた、標準的なマネジメントができる。
9.社会(国民)への予防医学活動、健康啓発をすることにより、健康増進をはかることができる。
10.健診施設の質の向上について、中心的な役割を果たすことができる。
症例経験
人間ドック健診受診者について、問診情報による個々の受診者の臨床背景に基づき、検査結果の説明とともに、必要な生活習慣の修正指導ができる。また、必要な再検査・精度検査を正しく指示できる。さらに治療の必要性については、人間ドック健診受診者の主治医として、適切に専門医への紹介、医療連携ができる。なお、現在治療中の受診者については、その治療が関連学会の定める治療目標に達しているか等についてのセカンドオピニオンができる。
研修スケジュール
研修1年目
研修開始3ヶ月間は、初期研修として指導医の指導のもとに、臨床検査の実際を学ぶとともに、臨床検査結果の所見の記載方法、臨床検査の結果に基づく事後指導を学ぶ。また、医療面接の確認により受診者の臨床背景を把握できることを学ぶとともに、人間ドック健診での診察法を学ぶ。さらには、人間ドック健診の結果の説明と、その結果により必要な再検査・精密検査の指示ができることを学ぶとともに、人間ドック健診受診者の主治医として、専門医の紹介を適切に行うことができることを学ぶ。3カ月間の初期研修終了後は、指導医の指導のもとに人間ドック健診の実際を経験する。
研修2年目
指導医のもとに、さらに人間ドック健診の実際を経験する。
研修3~5年目
独立して、人間ドック健診の実際を経験する。
研修プログラム
別に定める人間ドック健診専門医研修カリキュラムに準じる。